【2025年義務化対応】
建設・工事現場の暑さ対策完全ガイド
熱中症を防ぐ最新グッズと職場環境の改善法
2025.10.26
夏場の作業現場は命に関わる過酷な環境です。炎天下で働く現場作業員の方々にとって、安全に仕事を続けるためには暑さ対策が欠かせません。酷暑が続くことも多い現代では、建設現場や工事現場などの現場仕事で熱中症になる危険性も高まっています。
本記事では、作業現場の暑さ対策をテーマに、なぜ対策が必要なのか、どのような予防策やグッズが有効なのかを徹底解説。2025年から始まった熱中症対策の義務化への対応や最新の現場事例も紹介します。
大切な仲間の命と健康を守るためにも、以下の業種に携わっている方はぜひ参考にしてください。
- ● 建設業(建設工事現場)
- ● 道路工事
- ● ダム工事
- ● プラント工事
- ● 電柱の上での設備工事
屋外工事現場で暑さ対策が必要な理由
屋外工事現場で暑さ対策が必要な理由は、以下の2つです。
- 1. 死傷者数が増加傾向にある
- 2. 熱中症対策の実施が義務化
- それぞれ詳しく解説します。
理由1. 死傷者数が増加傾向にある
厚生労働省の発表によると、令和6年(2024年)の職場での熱中症による死傷者は1,257人にのぼり、前年より151人(約14%)も増加しました。そのうち約4割が建設業と製造業で発生しており、屋外作業や高温の設備環境が要因とされています。死亡者も31人に達し、特に建設現場で10人、製造現場で5人と多くの命が失われています。
多くのケースでは、体調の異変に気づくのが遅れたことや、適切な初期対応が取られなかったことが重篤化の原因となりました。こうした背景から、現場ごとに「熱中症の早期発見体制」や「緊急時の対応手順」を整えることが急務となっています。
出典:厚生労働省「令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します」
理由2. 熱中症対策の実施が義務化
2025年6月1日に施行された労働安全衛生規則の改正省令により、熱中症対策は企業の義務として明確に定められました。WBGT(暑さ指数)28℃以上または気温31℃以上の環境で作業する事業者は、対策を講じなければなりません。
いままで努力義務にとどまっていた内容が罰則付きで義務化された背景には、気候変動による猛暑の常態化と、労働災害の増加があります。
改正規則では、特に以下の3点が重視されています。
- ● 熱中症リスクの早期発見体制の整備
- ● 重篤化を防ぐための措置手順の作成
- ● 関係者への周知
出典:厚生労働省 鹿児島労働局「職場における熱中症対策の強化について~令和7年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行されます~」
屋外工事現場で熱中症が起こりやすい2つの要因
屋外の現場仕事では、なぜ他の環境よりも熱中症のリスクが高いのでしょうか。その理由は主に環境と作業条件にあります。
環境要因(暑さ・湿度・日射)
建設現場や工事現場では、環境そのものが熱中症の発生を後押しする要因になります。夏の強い日差しを浴び続ける屋外作業では、直射日光に加えて地面や鉄骨からの照り返しが重なり、体感温度が一気に上昇するからです。
コンクリートは熱を吸収しやすく、昼間に溜めた熱を夕方以降も放出するため、深夜まで気温が下がりにくいのが特徴です。また、無風状態では汗が蒸発せず、身体の熱を逃がせません。
さらに湿度が高いと、汗が気化しにくくなるため体温調節が難しくなります。たとえばプラント工事などの現場では、電源が未接続でエアコンが動かないケースもあるため、暑さ対策が必須といえます。
現場作業員が個人でできる暑さ対策
個々の現場作業員が日々の作業の中で実践できる暑さ対策を紹介します。自分の身は自分で守るという意識で、基本的な対策を習慣づけましょう。
こまめな水分・塩分補給で脱水を防ぐ
工場や倉庫では資材や製品の搬出入のために、大きなシャッター扉を開けっぱなしにする場面が頻繁です。せっかく冷房をつけていても、開口部から冷えた空気が外へ逃げてしまい、逆に外の熱気がどんどん入り込んでくるでしょう。
真夏の日中は外気自体が高温であるため、開放された扉から熱気が工場内に流れ込み、一気に室温が上昇します。こうした開口部からの熱気流入は空調効果を大幅に奪い、現場の暑さを助長する原因になります。
フォークリフトやトラックの出入りが避けられない現場では、この点を踏まえた対策が必要です。
製造機械から発生する熱
作業中は「喉が渇いた」と感じる前に水分を取ることが基本です。喉の渇きを感じた時点で、すでに脱水が始まっています。
ただし、水だけを大量に飲むのはNGです。汗と一緒に塩分(ナトリウム)が失われるため、水だけを補給すると体内の電解質バランスが崩れ、倦怠感や筋肉のけいれんを引き起こすおそれがあります。
理想的なのは、水分と塩分をバランスよく摂ることです。以下のような方法を意識してみてください。
- ● 1時間おきに少量ずつ水分を取る
- ● スポーツドリンクや経口補水液を用意する
- ● 塩タブレットや塩飴を携帯し、汗をかいた後に摂る
通気性の良い作業服と冷感インナーを活用する
服装の工夫は、最も手軽で効果の高い暑さ対策です。
倉庫作業や建設現場では長袖・長ズボンが基本ですが、素材を選ぶだけで体感温度が変わります。通気性と吸湿速乾性に優れたポリエステル混紡の作業服を選ぶと、汗をすぐに蒸発させて気化熱で身体を冷やす効果が得られます。
また、最近注目されているのが冷感インナーです。一見「重ね着すると暑そう」と感じるかもしれませんが、実際は逆で、汗を素早く吸い取り乾かすことで肌表面をサラサラに保ちます。
熱中症の兆候に早期対処する
どんなに対策をしても、身体が限界を迎える瞬間はあります。大切なのは「異変に気づいたらすぐ行動すること」です。
熱中症の初期症状には次のようなものがあります。
- ● めまい・立ちくらみ
- ● 筋肉のけいれん(こむら返り)
- ● 吐き気や頭痛
- ● 顔のほてりや意識のぼんやり
作業中は集中していて自覚しづらいため、普段より疲れやすい、汗の量が極端に多い(または少ない)などの違和感を覚えたら休憩を取りましょう。周囲に「少し頭がふらつく」「身体が熱い」と伝えることも大切です。
応急処置の基本は以下の3つです。
- ● 風通しの良い日陰に移動する
- ● 衣服をゆるめて身体を冷やす(首・わきの下・足の付け根)
- ● 経口補水液を少しずつ飲む
屋外工事現場で取り組む暑さ対策
熱中症を減らすためには、現場全体で「環境」「計画」「体制」の3つを整備することが大切です。設備を整え、作業計画を見直し、チームで健康を守る。この3つがそろって初めて、安全な職場環境が実現します。
ここからは、作業現場が一丸となって取り組むべき暑さ対策を紹介します。
現場環境を涼しく保つ設備の導入
まず取り組みたいのが、作業環境そのものを涼しく保つ工夫です。以下に、現場で導入されている主な設備をまとめました。
| 設備・対策 | 内容 |
| 大型送風機・サーキュレーター | 風の通りが悪い現場に設置して空気を循環させる |
| ミスト噴射機(ミストファン) | 水を霧状に噴射して気化熱で周囲の空気を冷やす |
| クーラー付き仮設休憩所 | 冷房設備を導入し、涼しい場所で休憩できるようにする |
| 地面や屋根への散水 | コンクリートや地表面を冷やす |
現場によっては、ミスト扇風機の近くに冷却タオルを常備したり、自動かき氷機を導入して身体の中から冷やす取り組みをしたりしているところもあります。
作業計画の見直し
設備を整えるだけでなく、作業スケジュールそのものを見直すことも有効です。
気温が最も高くなる午後2時前後は作業を避け、朝早い時間帯や夕方以降に集中して作業する方法が効果的です。また、WBGT(暑さ指数)が28℃を超えるような日には、休憩を1時間に1回など細かく設定すると良いでしょう。
さらに、休憩場所にも気を配りましょう。冷房のある休憩室や日陰のスペースを現場ごとに確保し、休む時はしっかり冷やせる環境を整えることが大切です。人員に余裕を持たせて順番に休憩できる体制を作れば、作業の質も維持できます。
健康管理体制の強化
熱中症を防ぐうえで欠かせないのが、チーム全体で支え合う健康管理体制です。個人の自己判断だけに任せず、組織として健康状態を把握・サポートする仕組みを整えましょう。
効果的なのが「バディ制」です。二人一組でお互いを見守り、異変があればすぐ報告するルールを明確にします。「自分はAさんの担当」「Bさんを見ておく」と役割を決めておくと、孤立を防ぎ、声を掛け合う意識も高まります。
さらに、監督者や安全衛生担当者が現場を巡回して直接声をかけることも大切です。「顔が赤いけど大丈夫?」「水分取った?」といった一言が、休憩するきっかけになります。
屋外工事現場で役立つ暑さ対策グッズ
暑さの厳しい夏場は、設備面の対策に加えて、個人で使えるグッズを活用することも熱中症対策に有効です。
最近では、建設業の工事現場や道路工事などの現場用グッズが次々に登場しています。ここでは、現場作業のような外仕事で役立つ代表的なアイテムを3つのカテゴリに分けて紹介します。
熱中症の予防に向け最新グッズを手に入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
ファン付き作業着
現場で人気が高まっているのが、背中部分に小型ファンを搭載したファン付き作業着です。
服の内側に風を送り込み、汗を強制的に蒸発させることで体の熱を逃がす仕組みです。常に扇風機の風に包まれているような感覚で、猛暑でも体感温度を下げられます。
ただし、すべての現場で使えるわけではありません。粉じんが舞う現場や、風が循環しにくい狭い空間では使用が制限されるケースもあります。たとえば、道路工事や配管工事などの工事現場では安全上の理由で使用できない場合もあるため、現場のルールを確認しておきましょう。
使用できないケースを詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
>>ファン付き作業着が使えない現場とは?ファン付き作業着に代わる対策アイテム
携行冷却グッズ
体を素早く冷やすなら、持ち運びしやすい冷却グッズが便利です。作業の合間や休憩時間に使えるおすすめアイテムをまとめました。
| グッズ名 | 特徴 | 使用シーン |
| 冷感タオル(クールタオル) | 水に浸して絞るだけでひんやり。首や頭を冷やせる。 | 屋外作業の合間、昼休憩時 |
| ネッククーラー(携帯扇風機) | 首元を冷やしたり風を当てたりでき、充電式で繰り返し使える。 | 現場移動中や軽作業時 |
| 冷却スプレー | 衣服に吹きかけて瞬時に冷却。メントールで清涼感が得られる。 | 作業前・作業中のクールダウン |
| 瞬間冷却パック | 叩くと冷たくなり、使い捨てできる。 | 緊急時の応急冷却 |
| 氷嚢・保冷ボックス | 冷水や氷でタオルを湿らせたり、氷嚢で局所を冷却したりできる。 | 休憩所での体温リセット |
ペルチェ+水冷のハイブリッド冷却服
ファン付き作業着のほか、保冷剤タイプやペルチェ素子単体で冷やすベストもありますが、冷却時間の短さや交換の手間が課題でした。そこで注目されているのが、私たち日本シグマックスの「アイシングギア ベスト2」です。
ペルチェ素子(電気で温度を変化させる装置)で冷やした水をベスト内部のパッドに循環させ、体の広い範囲を効率的に冷やします。気温35℃を超える酷暑環境でも冷却効果が持続し、背中や脇など体幹部を中心に温度上昇を抑えられるのが特徴です。
ファン付き作業着が使えない粉塵環境や狭所作業にも対応しており、工事現場や道路工事などの屋外作業で高い効果を発揮します。
費用は159,500円(税込)と高額ですが、補助金を利用できる可能性があります。熱中症対策に活用できる補助金については、以下の記事で詳しく解説しています。
>>熱中症対策の補助金・助成金一覧|企業向け支援制度ガイド【2025年版】
作業現場に常備すべき熱中症対策応急キット
作業現場には、万一の熱中症に備えた応急キットを常備しておきましょう。基本は保冷剤や氷をクーラーボックスに備蓄し、首・脇下・股関節をすぐ冷やせるようにすることです。スポーツドリンクや経口補水液も十分に準備し、摂取量を把握して救急隊へ伝えられるようにします。
塩タブレットや飴も意識がある方の塩分補給に有効です。屋外では日除けテントやシートで直射日光を防ぐだけでなく、必要に応じて搬送できるように担架や毛布も用意しておくと安心です。さらに体温計や血圧計を備えた「熱中症対応型救急箱」を整えておけば、迅速な判断と命を守る初動が可能になります。
まとめ
炎天下での作業は命に関わる危険と隣り合わせです。だからこそ、「環境」「計画」「体制」の3つを整えることが、安全な現場づくりの基本となります。
主なポイントは以下のとおりです。
- ● WBGT28℃以上では対策が義務化
- ● 作業中は1時間ごとの水分・塩分補給を習慣化
- ● 通気性の高い作業服や冷感インナーを選ぶ
- ● ミスト扇風機・送風機・クーラー休憩所の設置
- ● バディ制による体調確認と声かけ
また、ファン付き作業着や冷却ベスト、経口補水液・冷感タオルといった最新グッズを上手に取り入れることで、体感温度を下げ、熱中症のリスクを減らすことができるでしょう。
仲間の異変に気づいたらすぐに声をかけ、迷わず休む勇気を持つことが何よりの対策です。安全で快適な現場をつくるために、今日からできることを一つずつ実践してみてください。
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