熱中症対策におすすめの飲み物は?
水分補給が重要な理由、
予防のための水分の飲み方、
注意が必要な飲料についてもご紹介
熱中症対策におすすめの飲み物は?
水分補給が重要な理由、
予防のための水分の飲み方、
注意が必要な飲料についてもご紹介

熱中症対策において欠かせないのが水分補給です。強い日差しや蒸し暑い環境下で作業を行うにあたって、適切な水分補給は健康と命を守るために欠かせない基本的な熱中症対策です。しかし、肉体労働を伴う場合、単にのどの渇きを潤すだけでは不十分であり、作業環境や体調に合わせた的確な水分補給が求められます。
本記事では、熱中症を防ぐために水分補給が重要な理由やそのメカニズムをはじめ、現場に常備すべきおすすめの飲み物の選び方を分かりやすくご紹介します。さらに、作業中に実践したい水分の飲み方のポイントや、注意が必要な飲料、日常的にできる対策を解説します。現場の安全衛生を強化し、働く方々の命を守るための手引きとしてご活用ください。
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名古屋市立大学卒業/関連病院、ワシントン(DC)ホスピタルセンター循環器内科、豊橋ハートセンター、名古屋市立東部医療センター(現名古屋市立大学医学部附属東部医療センター)などを経て、医療法人三九会 三九朗病院循環器内科勤務中(2026年8月時点) |
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この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。 |
熱中症を防ぐために水分補給が重要な理由
私たちの体は約60%が水分で構成されており、これは健康を維持するために極めて重要な役割を担っています。具体的には、血液となって酸素や栄養素を全身に運ぶだけでなく、皮膚の血管を拡張したり(熱放散)、汗として体外へ放出し蒸発させたりすることで上昇した体温を下げる(気化熱)という体温調節機能もあります。暑い環境にいる時や現場作業で体を激しく動かしている時は、体温が急激に上昇しやすいため、より多くの汗を流して体温を下げようとします。
この時にかく汗は体の機能や健康を維持するための貴重な水分であり、汗として失った分を補給しないと脱水状態に陥ります。脱水状態になると次第に汗がつくれなくなり、体温調節ができなくなるため、体内に熱がこもって熱中症を発症します。また、血液の水分量が不足するので血液の濃度が高くなり、全身に行きわたらなくなるなど危険な状態に陥ることもあります。そのため、熱中症の危険から身を守るためには、のどの渇きを感じる前から意識して水分補給し、体内の水分量を適切に維持することが大切です。
熱中症の基礎知識
熱中症は、直射日光があたる屋外や高温多湿な屋内など、暑い環境で長時間過ごしたり、暑さの中で運動をしたり、肉体労働を続けたりすることで発症する病気です。肉体労働の現場では直射日光だけでなく、炉や機械などの熱源からの輻射熱、通気性の悪い防護服の着用といった悪条件が重なることで体から熱を逃がすことが困難になり、熱中症リスクが高くなります。また、暑さによって大量に汗をかくと、体内の水分が失われ脱水症状に陥りやすくなります。その結果、体温調節機能が正常に働かなくなり、体内に熱がこもってさまざまな症状が引き起こされます。
熱中症は2024年に改訂された最新の「熱中症診療ガイドライン」では、重症度によってⅠ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)、Ⅳ度(最重症)の4つのステージがあります。Ⅰ度(軽症)では、めまいや立ちくらみ、筋肉の痛みやこむら返りなどの症状が起こります。Ⅱ度(中等症)へ進行すると脱水がひどくなり、全身のだるさや集中力の低下、頭痛、吐き気、嘔吐などが見られるようになります。Ⅲ度(重症)は命に関わる状態で、意識障害と高体温、腎臓・肝臓機能の障害などの症状が出ます。分類の中でも最も症状の重いⅣ度(最重症)では、身体の深部体温が40.0度以上に達し、速やかに集学的治療を開始する必要がある状態です。
熱中症は初期状態で軽い症状だと思っていても、そのまま放置しているとどんどん悪化します。最悪の場合、命に危険がおよぶ緊急事態に陥ってしまうため、いちはやく適切な応急処置をすることが重要です。
体の水分と熱中症の関係
体の水分が減ることは、熱中症の発症と進行に直結しています。暑さによって汗をかき続けると、体内の塩分や水分などのバランスが崩れ、さまざまなサインが現れます。一般的に体内の水分を2%失うと、のどの渇きを強く感じるようになります。さらに3~4%を失うと、食欲不振やイライラ、皮膚の赤み、疲労感などが現れる可能性があります。
そして、5%程度の水分を失うと脱水症状が進行し熱中症のリスクが高まります。この段階ではめまいやこむら返り、頭痛、だるさなどの症状が現れることがあります。10%程度まで失ってしまうと筋肉のけいれんや循環不全、意識障害などが起こり、20%を失うと命に関わる恐れがあります。このように、体内の水分が減少するにつれ熱中症は重症化していきます。
労働現場で作業に集中していると、のどの渇きや疲労感などの初期サインを見落としがちになります。熱中症から身を守るためには、体内の水分不足が熱中症の発症に直結することを認識し、こまめに水分補給をすることが重要です。作業員1人ひとりの意識を高めるのと同時に、熱中症の発症・悪化を予防するための環境整備も重要です。
年々、猛暑日が増加するなか、熱中症による健康被害が増えており、2025年6月の法改正によって職場における熱中症対策が法的義務化されました。事業者には、作業員の健康と命を熱中症から守る対策の実施が必須になっています。熱中症対策の義務化については、以下の記事をご参考ください。
>>「2025年6月から熱中症対策義務化!違反した場合の罰則や、対策の基本的な考え方、環境・個人への投資について解説」の記事へ
熱中症対策におすすめの飲み物
熱中症を予防するための飲み物には、経口補水液、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、麦茶などさまざまな種類があります。しかし、水分補給といっても、まだ熱中症を発症していない段階に予防として飲むケースや、熱中症の疑いがある時に応急処置として飲むケースなど、状況はさまざまです。ここでは、シチュエーションや体調ごとにどの飲料が最適かを判断するポイントを解説します。
経口補水液
経口補水液は、塩分(ナトリウム)とブドウ糖を理想的な比率で配合した飲料です。小腸には、ナトリウムとブドウ糖が共に存在すると水分を効率よく吸収できるという性質があります。経口補水液はこの仕組みを利用して、脱水状態からの回復に必要な水分と塩分を効率よく吸収できるよう作られています。スポーツドリンクよりも、塩分濃度が高く、糖分が低いのが特徴です。スポーツドリンクが日常的な汗をかく場面での予防や水分補給を目的としているのに対し、経口補水液は失われた体液をすみやかに補う応急処置に特化しています。救急車を要請するような事態でも、本人に意識があり自力で飲める場合は、応急処置のファーストステップとして役立ちます。そのため、熱中症発生時に備えて、労働現場に常備しておくことが望ましいです。ただし、経口補水液は塩分濃度が高いため、健康な方が日常の予防目的として飲むものではないので注意しましょう。
スポーツドリンク
スポーツドリンクは、汗で失われる塩分やカリウムなどの成分を適切な濃度で含み、同時に糖分も配合されているので、腸管での水分吸収を促進する利点がある飲料です。長時間の屋外作業や肉体労働など、発汗量が多い現場の熱中症予防に適しています。こまめに摂取することで、熱中症の予防に効果を発揮します。現場の休憩所に冷やしたスポーツドリンクを常備しておくと良いでしょう。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は糖分を多く含むため、糖尿病の方は血糖値のコントロールを悪化させる可能性が高いです。糖尿病がなくても運動量が少ないデスクワークや軽作業の際に過剰摂取すると、高血糖になるなど健康への影響が出るリスクがあります。水の代わりに常用しすぎないように注意が必要です。糖尿病の方は、水や麦茶とスポーツドリンクを交互に飲んだり、糖質を減らして塩分を含むドリンクを現場で準備できるような環境づくりが理想的です。
2つ目の注意点は、すでに熱中症を発症している場合には、水やスポーツドリンクではなく、応急処置のために作られた「経口補水液」が適しています。スポーツドリンクでは塩分量が不足しています。また、その状態で水やスポーツドリンクを大量に飲むと、体内の塩分(ナトリウム)濃度がさらに薄まってしまい、「低ナトリウム血症」を引き起こす恐れがあります。熱中症予防はスポーツドリンク、熱中症発症時は吸収が良く塩分濃度の高い経口補水液に切り替えましょう。
水(ミネラルウォーター)
水(ミネラルウォーター)は、事務職の社員やエアコンの効いた管理室での監視スタッフなど、発汗の少ない環境で1日を通じてこまめに飲むのに適しています。しかし、発汗時に失われる塩分を含まない分、発汗量が多い場合には、水の補給だけでは体液中のミネラルのバランスを保てません。
また、水だけを飲み続けていると、体内の塩分濃度が薄まり、かえって体調を崩してしまうこともあるため(水中毒)、注意しましょう。発汗量が多い場合は、水だけでなく塩タブレットや梅干しなどを同時に食べ、塩分を補う工夫が必要です。
麦茶
夏場の定番として親しまれている麦茶も、日常的な熱中症予防として利用できます。麦茶には利尿作用を持つカフェインが含まれないため、尿として水分の排出を促すこともなく、休憩中に安心してまとまった量を飲むことができます。ただしミネラルはわずかしか含まないため、大量の汗をかく激しい作業を行う場合には、熱中症予防の飲料としては不十分です。塩気のある食べ物と同時摂取することをおすすめします。
熱中症を防ぐ水分補給のポイント
熱中症を防ぐためには、単に水分を補給するだけでなく、その実践方法にもポイントがあります。人間の体は、一度に大量の水分を摂取してもすべてを吸収できず、余剰分は尿として排出されます。そのため、一度に多く飲むのではなく、1日のうちで回数をわけて少量ずつ摂取することが大切です。特に起床時、入浴の前後、運動を行う前後は体が水分を欲するタイミングであるため、意識的な補給が求められます。このように、日頃から飲み方の質を高めることが熱中症に負けない体づくりにつながります。
発汗量が多い場合はこまめに水分補給する
夏の屋外作業や熱源となる機械の近くの屋内作業など、体温が上がりやすく、発汗量が多くなる現場ではのどの渇きを感じる前に、こまめに水分補給することが鉄則です。のどの渇きを自覚した時点では、すでに脱水が進み始めており、作業効率や注意力の低下につながる可能性があります。冷たい飲み物を現場に常備し、こまめに水分補給に努めるように環境を整備しましょう。例えば、タイマーを活用したり、現場責任者が定期的な給水を呼びかけたりすることで、水分補給を忘れる事態を防ぎ、労働者の安全を確保しましょう。
水分摂取と一緒に少量の塩分を補給する
大量の汗をかく現場作業では、体内から水だけでなく、塩分も同時に失います。そのため、水分摂取時には、適度な塩分を補給することが重要です。大量の汗をかいたあと、水だけを補給し続けると血液中の塩分濃度が低下し、足の筋肉が引きつるなどの症状が起こります。これを防ぐため、現場では水分補給とあわせて適度な塩分摂取を心掛けることが重要です。現場に塩タブレットや適度な塩分を含むスポーツドリンクを常備し、塩分補給ができる環境を整えましょう。万が一、熱中症の疑いがある時には、ただちに経口補水液を摂取できるように準備しておきましょう。
ただし、高血圧などの持病がある作業員については、塩分の過剰摂取にならないように注意する必要があります。高血圧の方は、塩分摂取量について1日あたり食塩6g未満にとどめるのが基本です。とはいえ、大量に汗をかくような重労働の場合は、発汗で失われた水分と塩分は補給しなければなりません。自己判断での過剰摂取は持病を悪化させるリスクがあるため、高血圧の方は主治医や産業医の指示を仰ぎましょう。
熱中症対策として注意が必要な飲み物
休憩中や作業前後の水分補給において、かえって労働者の体調を悪化させ、熱中症のリスクを高めてしまう飲み物があります。これらの飲み物は摂取の仕方によって体内の水分を排出する要因になることを把握しておきましょう。また、業務終了後のアルコール摂取についても注意が必要です。
コーヒー・緑茶・紅茶(カフェイン入り)
コーヒーや緑茶、紅茶はカフェインを多く含むため、熱中症対策の飲み物としては適していません。のどの渇きが一時的に和らぎますが、カフェインの持つ利尿作用によって、せっかく摂取した水分が尿として体外に排出されてしまいます。夏場の大量の発汗に見合うだけの水分補給は期待できないため、労働現場では嗜好品として飲みましょう。
アルコール
ビールや発泡酒、冷酒などのアルコールを含む飲料は、熱中症予防に適しません。昼休憩時の飲酒はもちろん、業務終了後の大量のアルコール摂取も翌日の熱中症リスクを高めることになります。アルコールには利尿作用があって尿意を促すため、尿として水分を排出してしまい脱水症状に陥るリスクが高まります。アルコールを摂取する場合は、休日前の晩に飲むか、業務終了後に翌日に影響の出ない範囲でたしなむ程度にとどめましょう。また、アルコールを摂取したあとは、十分に水分を補給しましょう。
飲み物の他に日常的にできる熱中症対策のポイント
熱中症を予防するためには、生活習慣を整えて暑さに負けない体づくりや、熱中症になりにくい環境づくりを心がけることが大切です。ここでは、日常的にできる熱中症対策のポイントについてご紹介します。
生活習慣を意識する
熱中症予防で大切なことは生活習慣を見直し、規則正しい食生活と睡眠リズムを習慣づけて暑さに負けない体をつくることです。食事に関しては、主食・主菜・副菜がそろったバランスの良い食事を1日3食規則正しくとりましょう。忙しい朝は朝食を抜いたり、軽く済ませたりしがちですが、寝ている間に失った水分や塩分、エネルギーを補給するためにも朝食は欠かせません。味噌汁やスープなど、適度な塩分を含む食品を取り入れるのも良いでしょう。
また、十分な睡眠をとって疲労を蓄積しないことも、熱中症予防には重要です。睡眠不足や体調不良の状態で無理をしていると、熱中症にかかりやすくなります。夏は寝苦しい夜が続き、睡眠の質が低下しがちです。エアコンの活用や、快適な寝具で睡眠環境を整えて質の良い睡眠を心がけましょう。
暑さに対する工夫をする
環境そのものを改善し、暑さから身を守る工夫をしましょう。仕事中もエアコンの効いた室内で過ごすのが理想的ですが、労働現場ではそういうわけにもいきません。そのため、業務前に気象庁ウェブサイトなどで、熱中症の危険度を示す指標である「暑さ指数(WBGT)」をチェックしたり、温湿度計を活用したりして、当日の作業環境の危険度を把握しましょう。
屋外作業が求められる場合は、遮光ネットや簡易テントによる日陰の休憩所を設け、危険を感じたらすぐに避難ができるように準備しておくことが不可欠です。また、屋内作業では大型ファンやスポットクーラーなどを導入し、作業環境の改善に努めることが重要です。
他にも、作業服の工夫も熱中症対策として有効です。通気性が良く、速乾性に優れた作業服を身に付けることで、体内に熱がこもりにくくなります。しかし、高温多湿な環境での作業や屋外での作業では、作業服だけの工夫では十分な熱中症対策にならない場合があります。また、安全帯や手袋、ヘルメットなどの装備が必要な環境では、作業服の工夫だけでは体内の熱が逃げにくくなり、熱中症のリスクが高まります。そのような場合は「熱中症対策グッズ」がおすすめです。例えば、首元などの太い血管を効率よく冷やす冷却用のネッククーラーやペルチェベストを活用すると良いでしょう。
猛暑が続く夏の現場で安全を確保するためにも、熱中症対策グッズはチェックしておきましょう。
>>「ペルチェベストとは?冷却服の種類と選ぶポイント、利用されている業界について解説」の記事へ
よくあるご質問(FAQ)
ここでは、熱中症の飲み物に関するよくある質問にお答えします。
Q1:熱中症予防にはどんな飲み物がいい?
A1:適した飲み物は、状況によって異なります。
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日常生活の予防:糖分やカフェインの入っていない水や麦茶が適しています。
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屋外作業や重労働で大量の汗をかく場合:水分とともに失われる塩分を補給できるスポーツドリンクが適しています。
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熱中症の疑いがある場合:応急処置として経口補水液を摂取しましょう。
Q2:水分補給のタイミングは?
A2:のどの渇きを感じる前に、こまめに補給するのが鉄則です。具体的には、以下のタイミングを意識しましょう。
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のどの渇きを感じる前:自覚した時点では、すでに体内の脱水が始まっている可能性があります。のどが渇いていなくても、休憩のたびにこまめな水分補給をしましょう。
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作業中:定期的に小休憩を設け、先回りして補給します。
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大量に発汗したあと:すぐに塩分と水分を補給します。
Q3:どのくらい水分を補給したらいいの?
A3:人間は、1日あたり約2,500mlの水を必要とします。その内訳は、以下の通りです。
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食事から:約1,000ml
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体の代謝(体内で栄養素がエネルギーになる時に生成される水)から:約300ml
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飲料水から:約1,200ml
熱中症が心配される暑い時期や、汗を多くかく環境にいる場合は、この基本の量に加えて、汗をかいた分だけさらに追加して水分を補給しましょう。
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