作業現場の熱中症対策は「投資」か「コスト」か?

管理者が考えるべき視点

作業現場の熱中症対策は「投資」か「コスト」か?

管理者が考えるべき視点

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「熱中症対策にかける予算をどう確保すればよいのか」「経営層への説得材料が見つからない」と悩んでいませんか。

2025年6月の法改正により熱中症対策が義務化され、対策を講じなければ罰則を受ける可能性もあります。

本記事では、熱中症対策を「コスト」ではなく「投資」として捉える視点や、費用対効果の考え方、活用できる補助金制度について解説します。

以下のような業種の方にも役立つ内容です。

  • 製造業

  • 建設業

  • 道路工事

  • ダム工事

  • プラント工事

  • 建設工事

  • 電柱の上での設備工事

ぜひ最後までご覧ください。

熱中症対策を戦略的な投資と捉えるべき理由

熱中症対策は、生産性・人材・企業価値を高める戦略的な投資です。単なる経費削減の対象と考えるのではなく、経営課題として位置づけることで、現場の安全と会社の成長を両立できる可能性があります。

ここからは、投資として考えるべき3つの理由を解説します。

暑熱環境の改善による労働生産性の向上

暑熱環境の改善は、作業効率の維持と熱中症による休業防止につながります。WBGT(暑さ指数)が28度を超えると熱中症の発症リスクが高まり、作業効率にも影響が出る可能性があるためです。

厚生労働省の発表によると、2024年(令和6年)の職場における熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は1,257人で、統計開始以来最多となりました。うち約4割が建設業と製造業で発生しています。

暑熱環境を改善すれば、欠員を防ぎながら現場の生産性を向上させられる可能性があるでしょう。

出典:厚生労働省「令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します

従業員エンゲージメントの向上と離職率の低下

暑熱対策への投資は、従業員の定着率向上と採用コスト削減につながる可能性があります。「会社が自分の体を守ってくれる」という安心感が、働き続けたいという意欲を高めるためです。

暑さで体調を崩しても何の対策もない職場と、冷却グッズの支給や休憩環境が整った職場とでは、働く側の心理的負担が異なるでしょう。

人手不足が課題となっている建設業や製造業において、福利厚生の一環として暑熱対策を明確に打ち出せば、求職者へのアピールポイントにもなります。

健康経営による企業ブランド価値の向上

健康経営の推進は、人材採用に良い影響をもたらします。中でも健康経営優良法人の認定取得は、企業ブランド価値の向上につながります。認定されると公式ロゴを名刺やホームページで使用でき、取引先や求職者に「従業員を大切にする会社」とアピールできるためです。

経済産業省が推進する健康経営優良法人認定制度は、従業員の健康管理を経営課題として捉え、積極的に取り組む企業を顕彰する制度です。認定を受けた企業は金融機関からの融資優遇や自治体からのインセンティブを受けられることもあります。

熱中症対策を含む職場環境の整備は認定要件の一部となっています。熱中症対策を進めることは健康経営を推進することでもあるのです。

出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度

健康経営と福利厚生を組み合わせた暑熱対策について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

>>福利厚生による暑熱対策&熱中症対策5選|高温環境で生産性向上を目指す企業事例

作業現場における熱中症対策の投資領域

熱中症対策への投資は、ハードウェア・ソフトウェア・個人装備の3つの領域に分けられます。自社の課題や予算に合わせて優先順位をつけながら検討してみてください。

これら3つの領域は、互いに補完し合う関係にあります。たとえば、大規模なハードウェア投資が難しい現場でも、個人装備とソフトウェアによる管理を組み合わせることで、低コストかつ効果的な対策ポートフォリオを構築することが可能です。自社の現場環境(屋内工場か、屋外移動が多いか等)に合わせて、これらを最適に組み合わせる視点を持つことが、投資対効果を最大化する鍵となります。

ハードウェア投資

ハードウェア投資は、施設全体の暑熱環境を根本から改善できる対策です。空調設備や断熱改修など、初期費用は大きくなりますが、一度導入すれば長期にわたって効果を発揮する可能性があります。

代表的なハードウェア投資の例を以下に整理しました。

  • スポットクーラー・大型送風機の設置

  • 工場屋根への遮熱塗装・断熱材の施工

  • 冷房付き休憩所(プレハブ含む)の新設

  • ミストファン・ミストシャワーの導入

  • 遮熱カーテン・遮光シェードの設置

設備投資は、省エネルギー投資促進支援事業や業務改善助成金の対象になる可能性もあるため、補助金の活用を検討すると費用負担を軽減できるでしょう。

ソフトウェア投資

ソフトウェア投資は、初期費用を抑えながら運用面を強化できる対策です。WBGT監視システムや休憩管理の仕組みを導入すれば、管理者が常時監視しなくても休憩のタイミングを適切に判断しやすくなります。

WBGT計測器を現場ごとに配備し、数値が基準を超えたら自動でアラートを発信するシステムを活用している企業もあります。

勤怠管理システムと連携して「1時間ごとに10分休憩」を自動でリマインドする機能を追加すれば、現場の負担軽減にもつながるでしょう。

個人装備への投資

個人装備への投資は、現場環境に左右されず作業者一人ひとりを守れる対策です。移動が多い作業や屋外作業との相性が良く、導入のハードルも比較的低いでしょう。代表的な個人装備には、ファン付き作業着、水冷式ベスト、ペルチェ式冷却ベストなどがあります。

なかでも「メディエイド アイシングギア ベスト2」は、ペルチェ素子で冷却した水を循環させる方式を採用しています。ファン付き作業着は汗の蒸発で体を冷やす仕組みのため、高湿度環境では効果が薄れる場合がありますが、ペルチェ式+水冷式ベストなら湿度に左右されにくい点がメリットです。

導入しやすい熱中症対策グッズについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

>>【企業向け】すぐに導入できる熱中症予防・対策グッズ特集

熱中症対策投資の費用対効果を可視化する方法

費用対効果の可視化は、熱中症対策の導入を促進するうえで欠かせないプロセスです。「熱中症対策に投資すべき」と頭では理解していても、具体的な数字がなければ導入に踏み切れない場合もあるでしょう。

ここからは、費用対効果を金額ベースで示す4つの視点を解説します。

人的損失を金額換算す

人的損失の金額換算は、熱中症対策の投資効果を示す基本的な方法です。休業によるロス時間×平均時給を算出すれば、1件あたりの損失額の目安が見えてきます。たとえば時給2,500円の作業員が5日間休業した場合、8時間労働×5日×2,500円=10万円程度の直接損失が想定されます。

さらに代替要員の手配コストや引き継ぎにかかる工数、残業代の増加なども加算される可能性があるでしょう。過去の熱中症発生件数と休業日数を集計し、年間の人的損失額を試算してみてください。

法令違反リスクを金額換算する

法令違反リスクの金額換算は、「対策しないコスト」を明確にする有効な方法です。

2025年6月施行の改正労働安全衛生規則により、熱中症対策が義務化されました。対象となるのはWBGT28度以上または気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業をする職場です。

ただし、これらの数値はあくまで具体的な措置義務が発生する法的目安です。基準値以下であっても、作業強度や従業員の体調に応じた安全配慮義務が免除されるわけではない点に注意し、余裕を持った基準で対策を講じることが重要です。

罰金だけでなく、是正勧告による作業停止命令が出れば工期遅延や機会損失につながりかねません。安全配慮義務違反で訴訟に発展した場合は、損害賠償リスクも想定されるでしょう。

出典:厚生労働省 富山労働局「職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)

生産性指標の改善を測定する

生産性指標の測定は、投資効果を客観的に示すための有効な手段です。対策導入前後で数値がどう変化したかを記録すれば、次年度の予算獲得にも説得力が増します。

測定しやすい指標は以下のとおりです。

  • 作業者1人あたりの作業スピード(1時間あたりの処理量)

  • 製品の不良率・手直し率の変化

  • ヒヤリハット件数の増減

  • 熱中症に関連する体調不良報告件数

「冷却ベスト導入後に不良率が減少した」「ヒヤリハット報告が前年より減った」といった実績データがあれば、経営層への報告資料としても活用できるでしょう。

資回収期間を算定する

投資回収期間の算定は、経営判断の材料として欠かせない視点です。ROI(投資利益率)とあわせて提示すれば、予算を獲得しやすくなります。

計算式は以下のとおりです。

  • ROI(%)=(得られた利益-投資額)÷投資額×100

  • 投資回収期間=投資額÷年間の削減コスト

たとえば、水冷式冷却ベスト50着と予備バッテリー一式を計250万円で導入し、熱中症による工期遅延や人的損失を年間100万円削減できれば、投資回収期間は2.5年となります。

補助金を活用して実質負担を125万円に抑えられれば、回収期間は1.25年まで短縮できる計算です。経営層に熱中症対策の必要性を説明する際も、投資額・期待効果・回収期間を数字で示せば、説得力ある提案ができるでしょう。

熱中症対策の投資負担を軽減する補助金・助成金

国や自治体が提供する補助金・助成金を活用すれば、設備投資や個人装備の導入にかかる初期費用を軽減できる可能性があります。特に建設業など屋外作業が多い業種では、熱中症対策が喫緊の課題となっています。

2025年度(令和7年度)に実施されていた主な制度は以下のとおりです。

  • 業務改善助成金:賃上げと設備投資を同時に進める中小企業向け。空調設備の導入や休憩所の整備が対象となる場合があり、補助率は最大4/5、上限額は30万円〜600万円

  • エイジフレンドリー補助金:60歳以上の労働者を雇用する中小企業向け。冷却ベストやWBGT計測器の導入が対象となる場合があり、補助率1/2、上限100万円

  • 働き方改革推進支援助成金:冷房設備や換気装置の導入を「働き方改革の一環」として申請できる場合あり。補助率最大3/4、上限360万円

なお、労働安全衛生法の改正により熱中症対策の義務化が進められており、会社として計画的な対応が必要です。申請期間や要件は年度ごとに変わるため、最新情報をご確認ください。

出典:厚生労働省「業務改善助成金
出典:厚生労働省「エイジフレンドリー補助金
出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金

補助金制度について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

>>熱中症対策の補助金・助成金一覧|企業向け支援制度ガイド【2025年版】

熱中症対策の投資を無駄にしないためのポイント

投資を無駄にしないためには、導入前の準備が欠かせません。稟議を通して予算を確保しても、目的が曖昧なままでは効果を実感しにくくなる可能性があります。

ここからは、投資を成功させるための3つのポイントを解説します。

経営課題と導入目的を明確にする

経営課題と導入目的の明確化は、適切な投資判断の土台となります。会社が抱える課題と対策の目的をはっきりさせれば、どれくらいの投資をすべきか判断しやすくなるためです。

「熱中症を減らしたい」という漠然とした目標ではなく、「昨年3件発生した熱中症をゼロにする」「夏場の離職率を前年比20%改善する」など、数値目標を設定してみましょう。

課題が明確になれば、ハードウェア投資を優先すべきか、個人装備の充実を図るべきかといった判断もしやすくなります。稟議を通す際も、課題と目的がセットで示されていれば承認を得やすいでしょう。

導入しない場合のデメリットを明確にする

導入しない場合のデメリットを明確にすれば、投資の必要性を周知できます。「やらなかったらどうなるか」を具体的に示すと、説得力も増すでしょう。

たとえば「対策を講じなければ法令違反で罰金が科される可能性がある」「作業停止命令で1日あたりの機会損失が発生するリスクがある」といった形で数字を示せば、投資の必要性が伝わりやすくなります。

法令リスク、人的損失、企業イメージの低下といった観点から、導入しない場合のデメリットを洗い出してみてください。

他社の導入事例や費用対効果のシミュレーションを確認する

他社の導入事例や費用対効果のシミュレーションは、経営層の疑問を解消する有効な材料です。「自社でも本当に効果が出るのか?」という問いに対して、同業種での実績データがあれば説得力が増します。

冷却ベストを導入した建設会社で熱中症発生件数が減少した事例や、空調設備を更新した製造工場で夏場の不良率が改善した事例など、具体的な数字を添えて説明すると効果的でしょう。

メーカーや代理店に問い合わせれば、導入前後の比較データや費用対効果のシミュレーションを提供してもらえる場合もあります。

まとめ

熱中症対策はコストではなく、生産性向上・人材定着・企業ブランド価値の向上につながる「投資」です。本記事のポイントを整理しました。

  •  WBGT28度を超えると作業効率に影響が出る可能性があり、熱中症リスクも高まる

  • 2025年6月から熱中症対策が義務化され、違反すれば罰則を受ける可能性がある

  • 人的損失や法令違反リスクを金額換算すると、投資の必要性を説明しやすくなる

  • 補助金・助成金を活用すれば、初期費用を抑えながら対策を進められる可能性がある

  • 導入目的の明確化と費用対効果のシミュレーションが投資成功の鍵となる

まずは自社の課題を整理し、どの投資領域から着手すべきかを検討してみてください。

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