熱中症の最新情報・研究から見る

「作業現場で求められる暑さ対策の新常識」

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「作業現場で求められる暑さ対策の新常識」

熱中症の最新情報・研究から見る「作業現場で求められる暑さ対策の新常識」

 

 2025年も日本の夏は猛暑が続きました。作業現場で働く方々にとって、熱中症対策はもはや「あった方がよい」ではなく「命を守るために必須」の取り組みです。

消防庁の統計では、2025年5月から9月の救急搬送者数が過去最多の10万人超え。さらに国立環境研究所は「2030年代には熱中症死亡者数が1.6倍になる」という衝撃的な予測を発表しました。

出典:消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
出典:国立環境研究所「長期的な暑熱適応の効果を見込んでも気候変動と超高齢社会により21世紀半ばに向けて熱中症死亡者数が増加する」

6月1日からは労働安全衛生規則が改正され、企業には法的義務として熱中症対策が求められています。

本記事では、最新の研究データと科学的根拠に基づいた「本当に効く暑さ対策」を4つのアプローチから徹底解説します。以下の業種に携わっている方はぜひ参考にしてください。

  • 製造業
  • 建設業
  • 道路工事
  • ダム工事
  • プラント工事
  • 建設工事
  • 電柱の上での設備工事

熱中症の最新状況【2025年総括】

まずは、2025年の猛暑が実際にどれほどの被害をもたらしたのか、公的機関が発表した最新の統計データをもとに総括します。

2025年の救急搬送者数

消防庁が発表した2025年5月から9月の全国救急搬送者数は100,510人で、統計開始以来もっとも多い人数を記録しました。前年と比較しても約3,000人増加しており、ひとつの地方都市の人口と同等の人数です。

送された方の内訳は以下の表をご覧ください。

年齢区分 搬送人数 割合
高齢者(65歳以上) 57,433人 57.1%
成人(18~64歳) 34,096人 33.9%
少年(7~17歳) 8,447人 8.4%
乳幼児(生後28日~6歳) 531人 0.5%
新生児(生後28日未満) 3人 0.0%

 

搬送直後の容体も深刻な状況です。

      • 死亡者:117人
      • 重症者(長期入院):2,217人

「少し気分が悪いだけ」と我慢した結果、命を落とすケースが後を絶ちません。自分だけは大丈夫だという正常性バイアスを捨て、めまい、立ちくらみ、足の攣りなど、少しでも異変を感じたら休息を取る勇気が必要です。

出典:消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」

死傷災害の速報値

2025年の職場における熱中症被害は、速報段階でも各地で増加傾向が見られます。NHKの報道によると、5月から7月の3ヶ月間だけで全国458人の方が被災しました。16の道県で前年を上回っており、働く環境の過酷さが増していると言えるでしょう。

地域ごとの速報値を以下の表にまとめました。

地域 状況 備考
全国 16道県で前年より増加 5月〜7月速報値
大分県 治療者212人(前年比+32人) 建設・製造で6割超
熊本県 死傷者16人(前年比+1人) 8月末時点

出典:NHK ONE「「職場の熱中症」16道県で前年比増加 相次ぐ労働災害に対策は」
出典:厚生労働省 熊本労働局「令和7年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」
出典:厚生労働省 大分労働局「熱中症による労働災害の発生状況(速報)を公表」

正式な確定値は2026年4月頃に発表されます。

職場での熱中症被害が増加するなか、実際に現場で異変に気づいた際にどのように対応すべきかを把握しておくことは、管理者にとって非常に重要です。初期症状の見極めから応急処置までの対応フローをまとめたこちらの記事も、あわせてご確認ください。

>>熱中症の疑いがある部下への対応フロー|初期症状の具体例と現場での応急処置を解説

国立環境研究所が発表した「熱中症死亡者数1.6倍」のシナリオ

 21世紀半ば(2031年〜2050年)には、熱中症による死亡者数が現在の約1.6倍に増えるという衝撃的な予測が出ています。

国立環境研究所と東京大学による共同研究は、私たちが持つ「暑熱適応(暑さに身体が慣れる機能)」を計算に入れた上で、それでも死者数が増えるという厳しい現実を突きつけました。温暖化の加速や高齢化社会の進行スピードが、人間の適応力をはるかに上回っているのです。

研究結果が示す未来の数値を、以下の表に整理しました。

条件 増加倍率
暑熱適応を考慮しない場合 2.2倍
暑熱適応を考慮した場合 1.6倍

 

「来年は涼しくなるかもしれない」と天候任せにするのは危険です。自分たちの力では変えられない気候を受け入れ、空調設備の見直しや作業服の改良など、物理的な対策で身を守る必要があります。

出典:国立研究開発法人 国立環境研究所「長期的な暑熱適応の効果を見込んでも気候変動と超高齢社会により21世紀半ばに向けて熱中症死亡者数が増加する」 

【生理学アプローチ】深部体温をコントロールする熱中症対策

最新の熱中症対策では、身体の中心部の温度である「深部体温」をいかに上げないかという点に注目が集まっています。単に涼しい場所にいるだけでなく、生理学的なアプローチを取り入れることで、より確実な予防が可能です。

ここでは、手軽に実践できる具体的な手法を解説します。

プレクーリング

プレクーリングとは、作業や運動を始める前にあらかじめ体温を下げておく手法のことです。熱中症になってから冷やすのではなく、熱が蓄積される前の余裕を作っておく点に特徴があります。

プレクーリングの実践方法は以下のとおりです。

      • アイススラリーを飲む:細かい氷の粒と液体が混ざったシャーベット状の飲料。液体だけのスポーツドリンクよりも冷却効果が高く、胃腸から直接深部体温を下げられる
      • 手足を冷却する:作業開始前に、バケツの水に手や足を浸す
      • 皮膚を濡らして風を浴びる:霧吹きなどで肌を濡らし、扇風機の風を当てて気化熱で冷やす

朝の実施が難しい場合、昼休憩の活用もおすすめです。午後の作業前に体温をリセットすることで、もっとも気温が高くなる時間帯の熱中症リスク低減につながります。

手のひら冷却(AVA血管)

手のひらを適切な温度で冷やすと、効率よく深部体温を下げられます。手のひらには、体温調節を専門に担うAVA血管(動静脈吻合)という特殊な血管が通っているからです。

実践する際は、冷やしすぎないよう水の温度管理に気を配ってください。氷水のような極端な冷たさは血管を収縮させてしまい、血液が流れなくなるため逆効果です。

効果を最大化するための手順を以下にまとめました。

      1. 15℃前後の水を用意する:水道水や、触って「少し冷たい」と感じる程度の水がベスト
      2. 手首までしっかり浸す:洗面器やバケツに水を張り、血管が集中する手首あたりまで両手を入れる
      3. 約15分程度続ける:作業の合間や休憩時間を活用して実施

バケツなどの用意が難しい現場では、タオルを巻いた保冷剤や、自販機で買ったばかりのペットボトルを握るだけでも代用可能です。

【テクノロジーアプローチ】データ管理で熱中症対策

最新の熱中症対策は、テクノロジーを活用したデータ管理が主流になりつつあります。ウェアラブルデバイスを手首に装着するだけで、目に見えない体温変化や熱中症リスクを数値化し、倒れる前にアラームで知らせてくれる仕組みです。

作業現場のニーズに合わせて、「高機能な一括管理型」と「手軽な現場完結型」の2つのタイプが登場しています。

代表的なデバイスの種類と特徴は以下のとおりです。

タイプ 特徴
一括管理型(REMONYなど) ・心拍数や体表温を24時間遠隔モニタリング
・異常時に管理者へ即時通知
・充電不要で連続使用が可能
現場完結型(カナリアPlusなど) ・深部体温の上昇を検知
・アラーム音と光で本人に危険を通知
・通信不要、ワンシーズン使い切り

 

どちらのタイプも、個人の感覚に頼らず客観的なデータで判断できる点が最大のメリットです。予算や現場の体制に合わせて最適なデバイスを選び、科学的なアプローチで従業員の健康と安全を守りましょう。

従業員満足度を高める熱中症対策について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

>>【離職率改善対策】従業員満足度(ES)を高める熱中症対策9選!夏の職場環境改革で人材定着へ 

【環境対策アプローチ】作業現場の熱源を断つ熱中症対策

個人の努力だけでは限界がある工場や倉庫の暑さ対策において、建物の屋根に遮熱シートを施工する方法が成果を上げています。環境省の実証事業では、屋根からの熱を断つだけで、熱中症リスクを大幅にカットできる事実が明らかになりました。

対策あり・なしの倉庫をひと夏比較した実証結果をご覧ください。

 遮熱シート施工による改善実証データ 

比較項目 対策なし 対策あり 効果
危険な暑さの時間(WBGT28℃超過) 770時間 413時間 46%削減
スポット空調の消費エネルギー 100% 36.5% 63.5%削減

 

もっとも注目すべきは、WBGT(暑さ指数)が危険ラインを超える時間が半分近くまで減少した点です。770時間もあった「熱中症リスクの高い時間」が413時間になり、従業員が危険にさらされる時間を46%も削ぎ落とせました。

さらに、屋根からの熱気が減ることでエアコンの効きが良くなり、電気代も6割以上削減できる結果が出ています。初期投資(施工費用)も数年で投資回収が可能です。従業員の命を守りつつ、経費も抑えられる一石二鳥の環境改善といえるでしょう。

出典:環境省「令和6年度環境技術実証事業」

【グッズアプローチ】装備で熱中症対策

 作業現場で使える熱中症対策グッズは多様化しており、個人装備の充実が労働災害の予防につながります。代表的な3つのグッズを紹介しますので、作業環境に応じて選びましょう。

ネッククーラー

首元の太い血管を冷やすことで、体温を効率よく下げられます。首には太い静脈が皮膚近くにあるためです。静脈は血液がゆっくりと体内へと戻っていく場所であり、その部分を冷やすことで身体の温度を下げ、熱中症を予防することにつながります。

ネッククーラーは繰り返し使えるものが多く、保冷剤タイプや電動タイプなど様々な種類があります。

ただし、首を冷やしすぎると首肩周りの血行が悪くなり、肩こりや首こりの原因となることもあるため、適度な温度管理が必要です。

参考:環境省「熱中症対策アイテム集」

ファン付きアイテム

厚生労働省のガイドでは、ファン付き作業着およびファン付きヘルメットが熱中症予防対策グッズとして推奨されています。ファンで送風して汗を蒸発させることで、体温上昇を抑制する仕組みです。

ファン付き作業着は衣服内に風を循環させて身体を冷却し、汗の蒸発を促すためクールダウン効果を得やすいのが特徴です。適切な休憩の取得で体温の正常化を図った上でのファン付き作業着の着用は、作業時間を長くすることも可能とされています。

ただし、汗をかかない環境や湿度が高い場所では効果が限定的となるため、環境に応じた使い分けが重要です。

参考:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」

ペルチェ+水冷式ベスト

ペルチェ式水冷ベストは、ペルチェ素子で冷やした水を循環させる方式です。

主な製品として「メディエイド アイシングギア ベスト2」が挙げられます。ペルチェにより冷却された水がベストに内蔵されたパッド内を循環し、人体を快適な温度に保つ水冷式の冷却服です。

35度以上の酷暑でも約5時間の冷感を維持できます。タンクレスで軽量(約1.8kg)かつ動きやすい設計となっており、保冷剤の交換が不要なため作業の中断を最小限に抑えられます。

福利厚生による暑熱対策が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。

>>福利厚生による暑熱対策&熱中症対策5選|高温環境で生産性向上を目指す企業事例

作業現場の暑さ対策に使える補助金制度

暑さ対策に使える補助金制度は、設備投資をしなければならない企業にとって重要な制度です。次年度(2026年度)の予算化に向けて、前年度の採択事例を参考に準備を進めましょう。代表的なものが「エイジフレンドリー補助金」で、60歳以上の従業員を常時1名以上雇用する中小企業が対象です。

補助率は1/2、上限額は100万円(消費税除く)となっており、ファン付き作業着や送風機の導入、WBGT測定器の設置、冷房付き休憩所の整備、熱中症リスク軽減のための教育費用などが対象経費として認められます。

対象となる設備・経費の例は以下のとおりです。

      • ファン付き作業着やクールベスト
      • WBGT計測器
      • スポットクーラーや大型扇風機
      • 休憩施設の整備(エアコン設置含む)
      • 熱中症予防教育の実施費用

ただし、2025年度の申請受付は終了しています。2026年度の補助金については、厚生労働省の公式サイトよりご確認ください。

出典:厚生労働省「エイジフレンドリー補助金」 

まとめ

2025年の熱中症による救急搬送者数は過去最多を記録し、職場での死傷者数も統計開始以降最多となりました。国立環境研究所の予測によると、21世紀半ばには死亡者数が約1.6倍に増加するとされており、さらなる対策の強化が求められています。

効果的な熱中症対策のポイントは以下のとおりです。

      • プレクーリングや手のひら冷却など生理学的アプローチの活用
      • ウェアラブルセンサーによるデータ管理で早期発見
      • 遮熱シートや断熱材による作業環境の根本的改善
      • ネッククーラーやファン付きウェア、水冷式ベストなど効果的なグッズの導入
      • エイジフレンドリー補助金などの制度活用

作業現場での熱中症予防は、科学的根拠に基づいた多角的なアプローチが重要です。それぞれの現場に合った対策を組み合わせて、安全で快適な作業環境を実現しましょう。

メディエイド アイシングギア ベスト2」は、ペルチェ素子によって冷却された水がベストに内蔵されたパッド内を循環し、人体を快適な温度に保つ水冷式の冷却服です。

当社独自の特許取得済のアイシング技術で、タンクレスながらも広範囲かつ効率的に人体を冷却し、着用した人が快適と感じる温度管理と、作業性・可動性の両立を実現しています。

医療機器やサポーター製品で培った技術を詰め込んだ、日本シグマックスこだわりの製品です。
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